夢みる蝶は遊飛する
私はすべてを手に入れたくて、すべてを失ってしまったのだ。
けれど、そんな自分に浸っていたのも事実だ。
なにもかもを手に入れていることよりも、欲しいものが手に入らないことを嘆いている方が、快感だから。
あんなに知りたいと渇望していたことを知った今、知らないことがどれだけ幸せだったのかがやっとわかった。
無知ほど恐ろしいものはないと思っていた私は、浅はかだったのだろうか。
救いようもない愚かな過去と、そんな過去から抜け出せない現在。
そしてそれらの行き着く未来。
そんなものに、希望などない。
業火の中で永遠に苦しむことが、私には相応しいのだ。
母の柔らかな手の感触を思い出しながら、自分で自身の身体を抱きしめた。