夢みる蝶は遊飛する

体調の方は相変わらずひどかった。

石油ストーブの温風も届かず、すきま風が入る廊下側の席は、普段でさえ辛いのに今の私にはそれ以上に耐え難い拷問のようだった。


朝のHRの後、40分かけての清掃がある。

私が休んでいる間に大掃除は済んでいたのだけれど、今日も少し長めに清掃を行うらしい。

私は教室の窓拭きを任された。

クリーナーを窓に吹き付け、乾いた雑巾で拭いていく。

上の方まで拭こうと椅子に乗って立ち上がった瞬間めまいに襲われ、危うく椅子から落ちそうになり、ひやりとした。


今度は慎重に立ち上がり、ガラス越しに遠くを見つめた。

あの山を越えた、あの雲のむこうには、なにがあるのだろうか。

行ってみたところできっと、私の求めているものは見つからないだろう。



何人かと手分けをしてすべての窓を拭き終え、私は雑巾を洗うために水道へ向かった。

手が切れそうなほど水は冷たい。

真っ赤になった指を見つめて、ため息をついた。

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