夢みる蝶は遊飛する
「沙世はあれだね、訊かなきゃ気が済まないタイプ。その様子じゃもう経験済みかな」
思わず苦笑いをこぼしてしまったのを、彼は見逃さなかった。
もしかしたら、今朝の私と沙世のやりとりを聞いていたのかもしれない。
「でもさ、沙世も、なんでもかんでも首をつっこんでるわけじゃないんだよね。面倒なこととか嫌なことは、絶対にしないから」
「うん。それはわかるよ」
面倒くさい、が口癖の沙世。
彼女は自分の興味のあることにしか関わろうとしない。
沙世が先ほど私に向けてきたのが、かつて私に向けられていたような憐れみと同情と、それから傷をえぐる刃物のような好奇心とは明らかに違うのはわかっている。
「沙世はへこみやすいからさ、気にしてないとか言い張りながら、ものすごい気にしてるんだよね、本当は」
私は頷く。
「だから、もし亜美ちゃんがいろいろ折り合いつけて吹っ切れたら、沙世の知りたいこと話してやって? 沙世、亜美ちゃんが来たときからずっと、亜美のこと何も知らない、って言ってるから。信用されてないのかなって」
「信用って、そんな・・・」