夢みる蝶は遊飛する

信用していないはずがない。

大切だからこそ、言えないのだ。

どうでもいい人にどう思われても、なにを言われても耐えられる。

けれど、自分にとって大切な人からもし攻撃されたらと考えると、どうしても私は私自身を守ろうとして隠してしまうのだ。


「わかってる。信用してるとかしてないとか、そんな問題じゃないってことは。
俺ね、祐輝や沙世よりは、ちょっとだけ鋭いから。あの二人はね、良くも悪くも単純だから。
たとえば、亜美ちゃんの作り笑いを見て、悲しくなるのはたぶん俺だけ」


思わず目を見開いた。

今まで誰にも見破られたことのないあの笑顔が偽りだったことを、気づかれていたなんて。

なにも言えなかった。

取り繕ったところで、きっと彼はすべて見抜いてしまうだろう。




「心の周りに鉄壁のシールドを張って、強くなれた?」



感情の見えない表情と声が、なぜだか恐ろしく感じられた。

責められている気がして、まるで叱られた子どものように情けない顔をしてしまった。



< 357 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop