夢みる蝶は遊飛する
信用していないはずがない。
大切だからこそ、言えないのだ。
どうでもいい人にどう思われても、なにを言われても耐えられる。
けれど、自分にとって大切な人からもし攻撃されたらと考えると、どうしても私は私自身を守ろうとして隠してしまうのだ。
「わかってる。信用してるとかしてないとか、そんな問題じゃないってことは。
俺ね、祐輝や沙世よりは、ちょっとだけ鋭いから。あの二人はね、良くも悪くも単純だから。
たとえば、亜美ちゃんの作り笑いを見て、悲しくなるのはたぶん俺だけ」
思わず目を見開いた。
今まで誰にも見破られたことのないあの笑顔が偽りだったことを、気づかれていたなんて。
なにも言えなかった。
取り繕ったところで、きっと彼はすべて見抜いてしまうだろう。
「心の周りに鉄壁のシールドを張って、強くなれた?」
感情の見えない表情と声が、なぜだか恐ろしく感じられた。
責められている気がして、まるで叱られた子どものように情けない顔をしてしまった。