夢みる蝶は遊飛する

底冷えのする体育館。

ストーブが端で二台稼働しているからと言って、大した効果はない。

式の開始まで、私は先ほどもらったカイロで暖をとっていた。

最近になってようやく覚えられた校歌を歌おうとしても、腹部に力が入らず息が漏れるだけ。


頭の中だけでなく、視界までもがベールを一枚隔てたような靄がかかっている。

前後左右に身体が揺れているのは、気のせいだろうか。

身体はもう、限界だった。



いつも話が長い校長は、すでに二十分以上話しつづけている。

自分の半生について語ったと思えば、今年の反省に来年の抱負。

その後は趣味の能観賞、美術館巡りについて延々と話しつづけていた。

最後に、センター試験を来月に控える三年生に向けての激励の言葉の最中、異変は起こった。

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