夢みる蝶は遊飛する
ぐらり、と床が揺れたのは、地震かと思った。
自分の足で立っているとは思えないような、ふわふわと揺れ動く感覚。
ざぁっとすべての血液が頭から降りてくるような気持ちの悪さが襲ってきた瞬間、目の前の景色が歪んだ。
体育館のフロアのくすんだオレンジ色と、女子生徒の制服の紺色が混ざり合って、奇妙なマーブル模様を描いている。
両膝に衝撃があり、自分が立っていられなくて床に膝をついたことに気づいた。
「亜美ちゃん!?」
「せ・・・先生、先生!」
周りのざわめきが、ひどく遠く感じる。
まるで砂嵐のような雑音は、耳鳴りだろうか。
ザーザーと激しいそれに掻き消されて、他の音はほとんど聞こえなくなっていた。
床についていた手に、なにかの雫が落ちる。
顎先から、なにかが滴っている。
拭ってみると、それは尋常ではない量の冷や汗だった。
それに気がついた瞬間に、身体中からさらに汗が噴き出るのがわかった。