夢みる蝶は遊飛する
胃が収縮を始め、胃液がせり上がってくるのがわかる。
気持ち悪い。
気持ち悪い。
今にも嘔吐してしまいそうなのを、唇を噛み締めて堪える。
ハンカチを出そうとカーディガンのポケットを探ったけれど、そこにはカイロしか入っていなかった。
邪魔だからと、式の前にポケットから出して鞄にしまったのを思い出した。
パニックになってしまった私の肩を、誰かが力強く掴んだ。
「大丈夫、立てるか?」
ひどい耳鳴りで他の音はほとんど聞こえないのに、耳元で囁かれたその声だけは、はっきりと聞きとることができた。
その問いに、曖昧に首を振る。
自分の力だけで立って歩くことはできそうにない。
「もうちょっと頑張れるか? 保健室行こうな」
半ば抱き抱えられるようにして、私は立たされた。
肩や腕に触れた感じから、若い男性教師だろうと思った。
けれど聞いたことのない声だ。