夢みる蝶は遊飛する
つんと鼻にくる痛みに、生理的な涙が出そうになる。
身体が大きく震えているのがわかる。
男性教諭は私を支えながら、背中をさすってくれていた。
吐き気がやっとおさまると、やっと落ち着いて呼吸をすることができた。
差し出された常温のスポーツドリンクを口に含むと、喉がひどく痛む。
また吐いてしまったらと考えるとあまり飲みたくはないけれど、そうしなければ脱水を起こしてしまうかもしれない。
甘みのあるぬるい液体が喉を通っていく感覚は、決していいものではなかった。
もう大丈夫だろうと気を抜いていると、ドクン、と心臓が一度だけ大きく跳ねた。
再び血の気がひいていくのがわかる。
だんだんと、なにも見えなくなっていく。
視界の白さが眩しくて、目を閉じた。
まるで父のような大きな手が、私の身体を抱き止めた気がした。
そこで、私の意識は焼き切れた。