夢みる蝶は遊飛する
「どうやって、その・・・悲しみとかを、克服したんですか?」
どうせ無神経なら、と私は質問を重ねた。
何秒かの沈黙が訪れる。
そして。
「克服?」
少しの間、遠くを見つめるような仕草をし、そして。
「克服なんて、してないわ。ただ、そうね・・・時間の流れが、ほんの少し傷を癒してくれただけ」
克服などしていない。
時の流れが少し傷を癒しただけ。
それはつまり、悲しみは風化してしまうということだろうか。
その人が生きていた証とともに、いつか忘れ去られて朽ち果ててしまうということだろうか。