夢みる蝶は遊飛する
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
けれどもやっぱり私は私のまま。
助けを求めることはできない。
にっこりと、でも控えめに笑みを見せて。
残っていたスポーツドリンクを一気に飲み干した。
「私をここまで連れてきてくれた先生って、どなたですか?」
立ち上がりながら、ブランケットを畳む。
朦朧とした先ほどの記憶は曖昧だったけれど、若い男性教諭であったことだけは覚えている。
「林先生よ。世界史を教えてる、たぶん三年生の先生」
知らない名前だった。
同じ学年でも理系クラスの担任の名前すら言えない私が、三年生担当の教師を知っているはずがない。
「林先生、ですか」
「若くて・・・他に言いようがないけど、とにかく若い先生。ちゃんとお礼言っておきなさいね。あと、佐竹先生にも顔見せてから帰りなさい」
その言葉に返事をして、保健室を後にした。