夢みる蝶は遊飛する
そして、よく頑張りました、という言葉とともに通知表を渡された。
私が恐る恐るそれを開くのを、先生が笑顔で見ていた。
予想以上に良い評価だったそれは、私の頬と口元を少しだけ緩ませた。
気をつけて帰りなさい、という言葉に頷いてその場を去ろうとして、思い出した。
「あの、三年生の林先生の席はどこですか?」
佐竹先生は不思議そうな顔をしながら周りを見渡した。
「林先生? えっと、一番むこうの窓際の列だったと思うけど・・・・」
指差された方を見ると、パソコンや積み上がった書類の隙間から、僅かに黒い短髪が見える。
一見林先生とはなんの関わりもない私がどうしてそれを訊くのかと不思議そうにしている佐竹先生に説明をした。
「林先生が、私を保健室まで連れてきてくれたんです。お礼言わなきゃって思って」
「あらそうなの。じゃあ後で私からもお礼言っておかなくちゃ」
小さく礼をして、私は林先生のもとへ向かった。