夢みる蝶は遊飛する
「そう、わかった。じゃあ一緒に帰ろう。・・・・そこの喚いてるハゲも一緒だけど」
心底嫌そうに最後の一言を付け加えたことが面白くて、吹き出して笑ってしまった。
「で、バーコード鈴木ってば亜美が休みだっていうのに毎回板書させようと名前呼んでさ。いませんって言ってるのにすぐ忘れるんだから、もう」
沙世は私が休んでいた一週間のことを、帰宅途中に話してくれた。
「あ、それから、生物の実験でニワトリの頭の解剖やって、あまりのグロさにお弁当食べれなかったんだよね。ピンセットでつまんでこれが小脳でこれが延髄で、とか・・・・思い出しただけで鳥肌たつんだけど」
自分で自分を抱きしめるようにして二の腕をさすっている沙世は、普段よりも饒舌だ。
たぶん、彼女なりに私に気をつかってくれているのだろう。
そうさせていることを申し訳なく思う反面、やはりそれも嬉しくて。
私は沙世の話を聞きながら、笑顔で頷いていた。