夢みる蝶は遊飛する
「ちょっと重いんだけど。お前の鞄の中なにが入ってるんだよ、水野」
私たち二人の後ろを歩きながら、三人分の鞄を肩にかけている須賀くんが不満そうに呟く。
沙世が、私たちの分の鞄を彼に強引に押しつけて持たせたのだ。
「うるさいわね、あんたバスケ部でしょ。なんのための筋肉なわけ?」
後ろを振り返りながら、見下したように沙世が言う。
「俺は人の鞄を持つためにバスケやってるわけじゃないんだけど」
なんだかとても申し訳なくて、私は足を止めた。
「ごめんね。私、自分で持つから」
そういって手を差し出すと、須賀くんはのけぞるようにしてそれを避けた。
「いやいや高橋さんの鞄は軽くていいんだって! 水野のが重いだけで」
そう言って私に渡そうとはしないので、私は後ろを気にしながらもまた歩きはじめた。