夢みる蝶は遊飛する
「そうそう、持たせておけばいいのよ。男に荷物持たせられるのは女の特権!」
「お前、中学三年まで俺より身長高かったくせに、女とかよく言えるよな」
「あたしに身長の話振るわけ? ほんっと、デリカシー無いんだから」
沙世が呆れたように見下した目で言い放つ。
こういった会話の端々から、幼馴染みだという二人の関係の深さが窺えて、それが私はうらやましい。
施設で一緒に暮らしていた他の子どもたちのことはもうほとんど覚えていない。
公立の小学校に通っていたけれど、そこから皇ヶ丘学園に入学したのは私だけだったから、その縁も切れてしまっている。
中等部時代の友人も、私が膝を壊してからは、いつの間にか離れていった。
バスケ部だった仲間とも、もう連絡はとっていない。
私が今この地にいることをも、新しく契約した携帯電話の番号も、誰も知らない。
だから時々、友情という関係をとても眩しく思うのだ。