夢みる蝶は遊飛する
「ごめん。言い方変えるわ。
やっぱりあたし、気になる。亜美が休んでる間、なにがあったのか」
恐る恐る瞳を合わせると、沙世は私を咎めるような表情はしていなかった。
ただ、どこかが痛んでいるかのような、悲しげな顔だった。
それはまるで私が心の奥に押し込めた感情を、沙世が感じとって映しているかのようで。
何度も口を開いて、けれど躊躇って閉じることを繰り返した。
そして。
私は、震える唇から言葉を押し出した。
「・・・すごく悲しくて、辛いことがあったの・・・・。私が、受け止められないくらい」
そうだ。
悲しかった。
辛かった。
けれどそれを、口に出すことができなかった。
言葉にしてしまえばきっと、私の心はさらに脆弱なものになってしまう。
そう思っていたから。