夢みる蝶は遊飛する
「今まで私、逃げてばかりだったから、立ち向かわなきゃいけないと思った。だから、自分にできる精一杯で、現実を受け止めようとした」
あれが、自分にできる精一杯だった。
言葉をかけて、父を送り出すということが。
「でも、私にできたのは本当にささやかなことで、小さすぎて、なにも変わらなかった」
だから、自分の存在の小ささが身にしみた。
いてもいなくても同じだと思った。
私という存在が両親にもたらしたのは、ただ崩壊、それだけだ。
むしろ、いない方がいいのではないかとさえ思った。
「もう・・・すべてが嫌になった・・・・・っ」
そう呟いた瞬間、目が燃えるように熱くなった。
世界が滲む。
涙が、私の世界を壊していく。