夢みる蝶は遊飛する
「・・・・泣いたら、弱くなる。弱いと、すぐに逃げ出したくなるから」
いつでも強くあることが、私に課せられていたことだった。
肉体的な強さだけではない。
精神的にも、なににも揺らがないように。
なびかないように。
私がそうして生きていくことを、きっと両親は望んでいたのだ。
そしてなにより、私自身が望んでいるのだ。
もっと強くなりたいと。
けれど、私は強くはなれなかった。
埋めることのできない穴が、いつも心にあったから。
その穴が、どうしてできてしまったのか。
それは私にはわからない。
どうしたら埋めることができるのかも。
これ以上弱ったら、きっと私は生きていけない。
頑なに涙を零すまいとしている私に向けて、沙世は静かに話しはじめた。