夢みる蝶は遊飛する
「すっきりしたような顔をしてるとこ悪いけど、顔っていうか特に目、すごいことになってるわよ」
沙世が笑いを堪えている。
けれど瞼に触れてみると、確かに熱をもっていて腫れているのがわかった。
「うわ、ぶよぶよしてるじゃん。顔洗ってきたら?」
沙世のその言葉に、部屋を出て洗面台に向かう。
久しぶりに泣いたものだから、こうなることを考えていなかった。
どんなひどい有り様だろうと、ため息をひとつついた。
鏡にうつった自分の顔に、言葉を失ってしまった。
充血した瞳は、腫れた瞼が邪魔をしてほとんど見えない。
どうりで視界が不明瞭なわけだ。
瞼が重く、目が開けられない。
まるで日本史の教科書に載っている土偶のような顔。
それがなんだかおかしくて、ひとりで笑ってしまった。