夢みる蝶は遊飛する
冷やすために氷をもらおうとキッチンに行くと、祖母が私の顔の惨状を見て一瞬固まった。
けれど私が笑っているものだから、驚いた様子でビニール袋に氷と水を入れ、タオルで包んで渡してくれた。
ひんやりとしたそれが、泣いてほてった身体に気持ちいい。
私の顔は、瞼だけでなく頬も鼻も唇も額も、真っ赤になって熱をもっていた。
その時リビングにいた祖父の背中を、じっと見つめた。
不自然にこちらに背を向けているから、わざと私の方を見ないようにしているのだろう。
きちんと話さなければならない。
祖父の持っている私の父に対する憎悪に似た感情は、真実を知らないゆえのものだ。
話してすぐに理解してくれるとは思わない。
けれど、向き合ってみなければなにもはじまらない。
小さく頷いて、私は部屋へと戻った。