夢みる蝶は遊飛する
「須賀祐輝、アイツに聞いた。正確に言えば、アイツのお母さんから。うちら幼馴染で、親同士も仲良いから」
私が答えを導き出すより先に、柏木さんがその名前を出した。
やっぱり、と思いながら、心の中で盛大なため息をつく。
信用なんか、するものではない。
隠し通したかった秘密を、知り合った初日に話してしまったあの日の自分を恨んだ。
「ねえ、ごめん。本題に入っていい?」
「・・・本題?」
嫌な予感がする。
できれば逃げ出したい。
けれどそれができないのはなぜだろう。
私の体は、金縛りに遭ったかのようにその場に拘束されていた。
顔がこわばっているのがわかる。
柏木さんが、私の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「女バスのキャプテンとして勧誘に来ました。バスケ部に、入ってもらえませんか」
真実を知ることを怖がって逃げまどう私を、どこまでも、どこまでも追いかけてくる。
決して私は、幸せにはなれない―――・・・・