夢みる蝶は遊飛する
「亜美! 準備しよ、準備」
沙世は須賀くんとヒロくんにツリーの飾り付けを完成させるように言い、ぼうっとしていた私の手を引いてキッチンに向かう。
沙世が事前に家で作っておいて持ってきていたサラダに、ドレッシングを混ぜ合わせる。
手作りだというそのドレッシングは、ゆずの香りがした。
手際良く作業を進める沙世を、私は眺めているだけだった。
「ちょっと突っ立ってないで、これ温めて」
予約をしていて、須賀くんたちが受け取りに行ってきたというファーストフード店のチキン。
四角い箱に入ったそれを、たどたどしい手つきで取り出し温めるためオーブンに入れた。
「亜美はこれ温め終わったら、このお皿に盛ってね。
ちょっと、あんたたち早くこっちも手伝ってよ。ヒロはテーブルにそこの食器並べて」
ふざけながらツリーの飾り付けをしていた二人にも指示を出し、沙世はてきぱきと場を仕切っていく。