夢みる蝶は遊飛する

須賀くんが上機嫌で歌を口ずさんでいる。

私のものよりも色素が薄く、透明感のある瞳。

その瞳には、色とりどりの電飾の光が映りこんでいる。

そして彼の唇から紡ぎだされる声は、とても澄んでいた。




それは、聖夜の物語。

ふたりで過ごす幸せな夜。


けれど、その言葉の端々から感じとることのできる、言いようもない寂しさ。

愛している。

愛している。

それなのに、悲しい結末を想像してしまう。



彼は、そんな歌を口ずさんでいた。

クリスマスソングの定番とも言われる有名な曲だから、耳にしたことはあった。

けれど、この曲を聞いてこんなに寂しくなったのは初めてだった。



「ちょっと、須賀は終わったならこっち手伝ってよ」


沙世の声で現実に引き戻される。

途切れた歌の続きは、どんな終わりをむかえるのだろう。

私にはわからない。

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