夢みる蝶は遊飛する
「亜美、これ切って・・・っていうのは不安だから、これよそってそっちに運んで」
沙世が紙袋に入ったバゲットを持ちながら指示してくれたおかげで、やっと私は動くことができた。
私がビーフシチューをよそい、沙世がバゲットを切り分け、そうしてなんとか準備が整った。
須賀くんが冷蔵庫から人数分のシャンメリーを取り出し、全員が席につく。
「あ、写真!」
そう言って須賀くんは席を立ち、デジタルカメラを三脚にセットした。
なにか操作をして、それから急いでこちらに戻ってくる。
「いちたすいちはー?」
ヒロくんが言うのに合わせて、私たちは声をそろえた。
「にー!」
カシャ、とシャッター音が鳴り、私たちの思い出はたしかに残された。
セルフタイマーの設定時間がわからず、笑顔で数秒間固まっているのは意外につらかった。
けれど、シャッター音が鳴った瞬間に皆で吹き出したのも、いい思い出になるだろう。