夢みる蝶は遊飛する

「もう、焦った焦った」


そう言いながら須賀くんが戻ってきた。

ジーンズは穿きかえたらしい。

先ほどのものより色が薄く、ダメージ加工がしてある。


それをちらりと見た沙世が、今日一番長く深いため息をついた。


「あんた、それわざと?」

「は?」


沙世の言葉の意味をはかりかねて、須賀くんが眉を寄せる。



「チャック開いてる」

「え、嘘、うわっ」


須賀くんが慌てて後ろを向くのを見て、私は目を逸らした。

飽きないとか、面白いというのは、今回は当てはまらなかった。


ヒロくんが腹を抱えて大笑いしているのも無視して、私と沙世は食事を進めた。


< 431 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop