夢みる蝶は遊飛する
「もう、焦った焦った」
そう言いながら須賀くんが戻ってきた。
ジーンズは穿きかえたらしい。
先ほどのものより色が薄く、ダメージ加工がしてある。
それをちらりと見た沙世が、今日一番長く深いため息をついた。
「あんた、それわざと?」
「は?」
沙世の言葉の意味をはかりかねて、須賀くんが眉を寄せる。
「チャック開いてる」
「え、嘘、うわっ」
須賀くんが慌てて後ろを向くのを見て、私は目を逸らした。
飽きないとか、面白いというのは、今回は当てはまらなかった。
ヒロくんが腹を抱えて大笑いしているのも無視して、私と沙世は食事を進めた。