夢みる蝶は遊飛する
「うっま! これ二人で作ったの?」
ヒロくんが目を輝かせる。
二人で、という言葉は語弊があるのではないかと思うくらい、私はなにもやっていないけれど。
それは言いたくなかったから、とりあえず頷いておいた。
「沙世はこういうの作るの得意だけどさ、亜美ちゃんもなんだね」
思わずしてしまった苦笑いの上から、慌ててまた笑顔を貼りつけ直した。
ヒロくんに対しては、どこか身構えてしまう。
あの日、彼は私の仮面に気がついていたから。
艶やかなクリームの飾り。
甘酸っぱい苺。
やわらかくて甘いスポンジ。
フォークを突き立てるとほろりと崩れるそれは、どこか儚い。
夢の終わりを感じさせるような。
なぜかはわからないけれど。
そうして、笑いと少しの切なさを含んだ聖夜の約束は果たされた。