夢みる蝶は遊飛する
「すごい! きれい・・・・」
サンタクロースとトナカイが、夜の街を駆けていく。
大きなクリスマスツリーが、楽しげに揺れる。
色とりどりの光が点滅し、おもちゃ箱に宝石をひっくり返したような、ユニークで華やかな飾り。
それは、一軒家の壁面と屋根、そして庭までを使った壮大なイルミネーションだった。
個人としては最大の規模だと思う。
「ここの家、毎年こうやって飾ってるんだけど、毎年どんどんすごくなってくんだよね」
彼の言葉に、大きく首を何度も振った。
名物と化しているらしく、多くの人が観に来ていた。
先ほど感じたざわめきは、その見物客たちによるものだった。
みんな、幸せそうな顔をしている。
満たされないものを抱えながら、それでも、今だけは。
すべてを忘れて、この美しい光の芸術を心に焼き付けた。