夢みる蝶は遊飛する
「昨日のバレー、膝を庇ってるようには見えなかった。あれだけ激しくやっておきながら、故障っていうのはおかしいんじゃない?」
柏木さんは一瞬怯んだものの、すぐに立ち直ったらしい。
もっともな反論をしはじめた。
「体育程度の運動なら、大丈夫なの。でも、毎日何時間も走り回るのは医者に止められてるから」
相手を諭すように、言葉を選びながら答えていく。
申し訳なさそうに、でも、強い意志を込めて彼女の瞳を見つめる。
柏木さんはそれでも食らいついてきた。
「あんまりこんなこと言いたくないけど、うちのチームそんなに強くないし。だからそこまで練習は厳しくないよ。平日は火・木・金しか体育館使えないし、土日は練習があっても片方だけだし。
だから・・・だからきっと」
「それでも」
私は少し強い語調で彼女の言葉を遮った。
「それでも、私にはできない。ブランクも、かなりあるから」
「・・・ブランク?」
先ほどから、彼女は表情を歪めてばかりだ。
そうさせているのは、私に違いないのだけれど。