夢みる蝶は遊飛する
「送ってくれてありがとう」
イルミネーションを観て、心が少し温まった気がした。
いつの間にか雪は止んでいて、それでも吐いた息が凍りつきそうなほど寒い。
けれどじんわりと私の心を温めているのは、言葉では言えない、たとえば感情のような、もっと抽象的なものだ。
私に、こんな風に感じることのできる心が残っていたなんて。
ちゃんと機能している。
私は壊れてなどいない。
強くはないけれど、弱くもないのだ、私は。
「うん、じゃあ」
そう言って家路につこうとした須賀くんの背に、声をかける。
「また、大晦日に会おうね」
彼はそれに頷いて、今度こそ暗い夜道に消えていった。
私の心に、春のような清々しい風が吹いた気がした。