夢みる蝶は遊飛する
まだ外に出て数分しか経っていないのに、指先はもう感覚がなかった。
手袋をとって来ようか迷っていると、小さな話し声が聞こえてきた。
そして暗闇のむこうから現れたのは、沙世、須賀くん、ヒロくんだった。
「家の中で待ってればよかったのに」
沙世が駆け寄ってきて、温めるように私の二の腕のあたりをさすった。
「ううん、今出てきたところだから」
マフラーをしっかりと巻き直してそう言うと、白い息が闇に溶けた。
神社は、私の家からは歩いて十分ほどの場所にあった。
そこにはすでにたくさんの人が集まっていた。
年が明けるとともに、順にお参りをしていくそうだ。
本殿の前には何十もの人が、綺麗に二列に並んでいた。
その最後尾に並ぶ。