夢みる蝶は遊飛する
境内には大きな穴のようなものが掘ってあり、そこには炎が燃えていた。
焚き上げというものだろうか。
何にしても、その大きな火からの熱気は、寒さを和らげてくれている。
その反対側を見やると、男性たちがテントの中でふるまいの準備をしていた。
この町では大厄、つまり四十二歳の男性はふるまいをするという風習があるらしい。
二十歳の時から月々積み立てをし、一人一人が数十万円も負担すると聞いて驚いた。
「お参り終わったら、甘酒飲みたい!」
須賀くんのその意見を、沙世が一蹴する。
「嫌。あたし甘酒嫌いなの」
目に見えて落ち込む須賀くんを、ヒロくんがからかいながら励ましている。
これが、私の日常。
やっと手に入れることができた、私の当たり前の日常。
コートの袖に隠した手を、ぐっと強く握りしめる。