夢みる蝶は遊飛する
私の大切なものは、すべて消えてなくなってしまうから。
だから、大切なものなどなにもいらないと、本気で思っていたあの頃。
失う痛みを知っていた私は、臆病になっていたのだ。
けれど、私はちゃんと手に入れることができた。
大切だと、胸を張って言えるものを。
それと引き換えに失ったものは、あまりに大きかったけれど。
そのことばかりに目を向けていたらきっと、私はいつまで経っても変わることなどできないだろう。
過去や、なにかを失ったという事実を引きずることと、忘れないことは違うのだ。
私のすべきことは、癒えかけた傷を自らまた引き裂くことではないのだから。