夢みる蝶は遊飛する

「あ、白組が勝ったって」


ヒロくんが、携帯電話を片手に報告してくれた。

それは、私が家を出る前に祖父母が見ていた歌番組の結果を伝える、ヒロくんの妹からのメールだそうだ。



「ヒロくん、妹がいるんだね」

「うん。今中二なんだけど、最近好きな奴ができたらしくてさ。男の落とし方とか訊かれちゃって、お兄ちゃんとしては悲しいんだよね」



一人っ子の私は、兄妹というものに憧れている。


もし私に兄弟がいたら、どんな関係を築いているのだろう。

考えてみたけれど、妹として兄や姉に甘える自分と、姉として弟や妹に頼られる自分のどちらも想像できなかった。


けれどもし、あの両親から生まれた子どもが私の他にいたとしたら。

そう考えただけで、嫉妬をしてしまう。

両親に愛されるのは、私だけでいいのだと。


兄弟がいるからといって、愛情が分割されてしまうわけではないのはわかっているけれど。


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