夢みる蝶は遊飛する
「私、たしかに中学も高校もバスケ部だったけど、もう膝が限界だったから、中学まででプレイヤーはやめたの。高校では、マネージャーだったから。
だからきっと私は、柏木さんの想像通りにプレイすることはできないし、する気もない」
「そうなんだ・・・、でも」
それでも彼女は食い下がる。
「たとえプレイヤーじゃなくても、高橋さんがいればうちのチームはもっと強くなる。マネージャーでもいい! バスケが好きなら、お願い。
今日は部活無いけど、明日は体育館で練習だから、もし良かったら見に来て」
それだけ言って、彼女は隣の教室へと帰っていった。
私はその後ろ姿を、ただ見つめていることしか出来なかった。
バスケが好きなら・・・・・?
好きに決まっている。
私がどんな思いでバスケを諦めたか、彼女にはわからないだろう。
半身を千切られたのと同じだった。
私の存在理由はバスケだったし、存在価値はバスケで量られていたのだ。
それでも。
できない、私には。
だってきっとまた私は、誰かを壊してしまう。
大切なものを失ってしまう気がする。
私という存在が罪ならば、罰を受けるのは私だけでいいはずだから。