夢みる蝶は遊飛する
「マネージャーの高橋です」
そう言って、温かい茶を入れた湯のみを差し出した。
湯のみが十数個並べられたお盆は重く、持っている手が震える。
それでも笑みは崩さずに、それらをすべて配り終えた。
今日は、部活動参観日である。
本来夏休み中に行われるはずだったのだけれど、台風のせいで延期となり、こんな時期までずれこんでしまったらしい。
正月の三が日が明けてすぐの今日でも、多数の父母が観に来ていた。
十二月の後半からずっと部活を休んでいた私。
けれど、帰ってきた私になにも言わずに、部員たちはいつも通りの態度で接してくれた。
だから私も、いつもと変わらない自分でいようとしている。
しかし、久しぶりの部活が、参観日という特殊な日にあたってしまったため、やはりそれなりに緊張もする。
マネージャーとは、ただコートの外から部員たちを観察しているだけの役職ではない。
部員を癒すなどという名目で、気の抜けた緊張感のない笑顔をまき散らすものでもない。