夢みる蝶は遊飛する
以前より筋肉の落ちた脚は、今どんなに鍛えても、いつかのように私を軽やかに跳ばせることはできない。
もう、3ポイントシュートも入らないかもしれない。
胸を張って誇ることのできた、私の武器。
バスケに関する無駄に豊富な知識を生かせるのは、こういった形でバスケに関わっていくしかないのだ。
けれど、皇ヶ丘学園でバスケをしていて、しかも全国優勝まで果たしたチームの一員だということを、ここの部員のほとんどは知らない。
須賀くん、舞、桜井くんだけは、この事実を知っているけれど。
私には、私のような人間を作りださないためにも、部員を常に安全な環境で活動させなければならないという使命感があった。
おこがましいかもしれないけれど、心からそう思うのだ。
欠陥品は、必要とされないのだから。
いくら修理しても、なんの傷もなかったようにはならないのだから。