夢みる蝶は遊飛する
「北海道に行きたい」
冬休みが明けて、今日は三学期の始業式。
沙世は登校して開口一番にそう言った。
「どうして?」
「北海道は冬休みが長いんだって。羨ましい・・・」
目の下にくっきりと残る青黒い隈は、沙世の努力の証だろう。
冬休みの課題を、なんとしてでも今日までに終わらせようとした証拠。
「北海道に住んでたら、あたし今の三倍は冬休みを楽しめたわ」
「でもそのぶん寒いよね、北海道は」
北海道といったら、雪のイメージしかない。
「だったら家から出ないからいいの」
ポーチから鏡を取り出し、隈を指でなぞりながら、沙世がため息をつく。