夢みる蝶は遊飛する
「だいたい、亜美が宿題写させてくれないから悪いのよ。全部写させてくれてたら、もっと軽い気持ちで三学期を迎えられたのに」
「私のせいにされても・・・」
私の答えを丸写しにしても、それは沙世のためにはならない。
沙世もそれをわかっているはずだけれど、それでも連日の勉強漬けは、彼女を卑屈にさせるのには十分だったらしい。
「でも、数学は課題テストで悪い点とったら補習があるって先生言ってたから、ちゃんと自力でできるようにしておかないと」
「バーコード鈴木め・・・残りの髪むしってやる」
物騒なことを言う沙世の手は、なにかを掴みとるような不穏な動きをしている。
それを私が笑うと、沙世が拗ねて。
そうしているうちに須賀くんやヒロくんも登校してきて。
また、平穏な日々がはじまってゆく。
以前とは少し違って見えるのは、私が変わったからだろうか。
もしそうならそれは、よい変化であってほしい。
やっとこの瞳は、今を見つめることができるようになったのだから。