夢みる蝶は遊飛する


その時だった。





「長谷川さん!」




大声で、私のことを呼んだ人物がいた。


振り向くのと同時に、口が動いた。




「は・・・」

「なにーっ!」


けれど、私よりも大きな声で返事をしたのは、隣にいる奈々だった。




「長谷川さん、空気入れってどこにあるかわかる?」


駆け寄ってきて奈々にそう話しかけたのは、男子バスケ部の一年生部員だった。

彼の視線の先には、奈々がいる。



長谷川奈々が。



「亜美先輩、空気入れって部室にありますよね?」

「あ、うん・・・・」


奈々の丸い瞳がこちらに向けられても、私は歯切れの悪い答えを返すことしかできなかった。


< 475 / 681 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop