夢みる蝶は遊飛する
自動販売機は屋外にあり、さらに校舎と校舎の間にあるため、ここは北風の通り道なのだ。
枯れ葉が乾いた音を立てて中庭を滑る音が、寂しげに聞こえてくる。
「やっぱり亜美と一緒のにしようかな・・・」
それでも沙世は迷っている。
なんでもいいから早くして、と言おうとした瞬間。
身体が凍りついた。
鋭く、冷たい視線に射抜かれて。
呼吸さえ止まるほどの一瞬の緊張ののちに、後ろを振り返る。
そこには、誰もいなかった。
窓ガラス越しに見える校舎の中は、昼休みの楽しげな空間だ。
気のせいだと思おうとしたけれど、激しく動く心臓が、それがたしかな事実だと懸命に伝えようとしている。
胸を押えて、呼吸を鎮めようとした。
嫌な汗が、額にうっすらと浮かんでいる。