夢みる蝶は遊飛する

家に帰ると、玄関に見慣れない臙脂色のサンダルがあった。

リビングからは談笑が漏れている。

一応挨拶をするべきだと思い、軽く身だしなみを整えてから、扉を開けた。

すると、それに気がついたのか会話が中断される。

祖母と、見知らぬ女性がそこにはいた。


「ああ、亜美ちゃん。お帰りなさい」


祖母が笑う。

ただいま、と返すと、机を挟んで祖母の正面に座っている女性の目が、きらきらと輝いたような気がした。


「あら! もしかして千代さんのお孫さん?」


千代というのは祖母の名前である。

ちなみに母は美波、父は雅人という。


「ええ。初めまして、高橋亜美です」

「こんにちは。須賀佳奈子です! 二つ向こうの通りに住んでるから、よろしくね」


邪気のないその笑みにつられて私も微笑みながら、心の中で首を傾げた。

須賀?

なんとなく、違和感というか、疑問が湧き上がる。

もしかして・・・・・

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