夢みる蝶は遊飛する

彼は中学生の時に太ももの肉離れを起こしており、また昨年手の靭帯を伸ばしているらしい。

怪我をした部位が、今日のような寒い日に痛むことはよくある。

私も右膝に、うずくような痛みを感じたり、動きが悪いと思ったりすることがたびたびある。



「うん、わかった。もうすぐ練習が始まるから急がなきゃね」


彼にテーピングを施している間も、背中がちくちくと痛んだ。

今は視線を感じていないのに、余韻がいつまでもつきまとっている。



あの、私のすべてを否定するような視線。

その瞳は、どんな想いを宿しているのだろうか。



それは私を映しているのか、それとも。

私を通して誰かを見つめているのか。



私にはなぜだか、後者であるような気がした。

根拠のない確信だけが、不安だらけの心の中に残った。



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