夢みる蝶は遊飛する
背後や他人の視線を気にしながら過ごしていると、いつの間にか一月は数日を残すだけとなっていた。
時間が過ぎるのがやけに早い。
一ヶ月前の自分を、懐かしいと思いさえする。
世界にはまるで、自分と両親しかいないかのように思っていた自分を。
時の流れは残酷だ。
いろいろな想いを風化させてしまう。
楽しいことがあるとそれに夢中になって、亡くなった両親のことなど忘れてしまっている自分がいる。
そしてふと思い出した時に、ひどい罪悪感に襲われる。
いつも、いつまでも死を悼んでいる必要はないということはわかっている。
けれど、いつか忘れてしまいそうで怖いのだ。
苦しみと、哀しみと、すれちがいの先に、たしかな愛があったことを。