夢みる蝶は遊飛する
部活が終わり、片づけも済ませて制服に着替えている時に、なにか手に固いものが触れた。
ジャージのポケットを探ると、テーピングカッターが入っていた。
救急箱にしまおうとして、それに小さく『男子』と書いていることに気がつく。
そこで思い出した。
女子部員のテーピングをするときに、カッターの切れ味が悪く、男子のものを借りたことを。
明日返せばいいと思いながらもどうしても気になってしまい、結局今から返しに行くことにした。
急いで着替えて荷物を持ち、電気を消して部室を出た。
クラブハウス棟一階の女子の部室を出て、階段を上がる。
すると、ひとつの部屋から明かりが漏れていた。
男子バスケ部の部室だ。
まだ帰っていない部員がいるか、電気を消さずに帰ってしまったかのどちらかだろう。
冷たいアルミの扉をノックしてから、ゆっくりと開けた。