夢みる蝶は遊飛する
しゃがんで蓋を開けて、テーピングカッターをしまう。
そのついでに、中も少し整頓する。
絆創膏のごみや、使用済みのティッシュでいっぱいのところを見ると、誰かがごみ箱にしているのかもしれない。
心の中で文句を言いながら、部室の隅に落ちていたビニール袋の中にそれを入れる。
背後に、後輩の視線を感じながら。
「高橋先輩」
「なに?」
そちらに視線は向けず、言葉だけで先を促す。
「先輩って、可哀想な人ですよね」
鼻で笑ってから、彼はこう続けた。
「自分の父親が死ぬって、どんな気持ちですか?」