夢みる蝶は遊飛する
「黒木貴史」
「・・・・」
露骨に目を泳がせる。
そこまで私が突き止めているとは思っていなかったのだろう。
「薄くんが嫌いなその人と私の共通点は、皇ヶ丘学園」
微かに聞こえた、鋭い舌打ちの音。
そして堰を切ったように喚く。
「そうですよ。でも、たかがそれだけでって思ってるんですか?
俺がどうしてあいつを嫌いなのかも、もう知ってるっていうんですか?
先輩だって本気でバスケやってたのに、あんな卑劣なこと許せるんですか!?」
肯定にも否定にもとれるように、曖昧に首を振る。
「さすがに詳しいことまでは知らないけど、だいたいはね」
「だったら!」
だらりと垂らしていた手に力を入れて拳を作り、彼は続けた。
「だったら俺のこの感情を、否定しないでください」
その瞳に一層の憎しみと悲しみが込められたのを感じ、私は貼りつけていた笑みを剥がした。