夢みる蝶は遊飛する
「あいつが・・・・」
その部員の顔が思い浮かんだのか、そう小さく呟いた。
「もっと詳しいことは、知ってるんですか。例えばその、口利きの内容や理由は」
私は頷いた。
すると、彼は長く息を吐き、それから話しはじめた。
「俺と黒木はミニバス時代からの親友で、ライバルだったんです」
どこか遠くを見つめるその瞳には、幼い自分たちの姿が映っているのだろうか。
「学区の関係で小学校は違ったけど中学は同じで、俺たちは一年生の頃からメンバー入りしてました。俺はフォワード、あいつはセンターで、いつも一緒に試合に出てました。
あいつがいれば、格上の相手でも負ける気なんてしなかったし、どこまでも勝ち進んでいける気がしてました」
実際はそんなことなかったですけど、と淡く笑う。
風にゆらめく炎のように。
「県大会に出るのが、チームの目標でした。でもそのためには市内の大会で優勝して、その次の地区大会で4位以内に入らなきゃいけなかったんです。でも俺たちの中学は、市内大会優勝が精一杯でした」