夢みる蝶は遊飛する

勝つチームがあれば、負けるチームもある。

常勝といわれた私たち、紅の魔女だって、練習試合も含めたすべての試合で負けたことが一度もないわけではない。

数人が上手いだけではやっていけない。

チーム全体のレベルを底上げしなければ、たとえ勝ち進んでも、いつか限界がくるのだから。




「それでも俺は満足してました。負けてもいいとかそういうことじゃなくて、あいつと一緒に精一杯やれたことに」


そう思える友人が、私にもいたことを思い出す。

今はもう、会えないけれど。


だからこそわかるのだ。

もしその人物に裏切られたとしたら、どんな気持ちになるのか。



「でも、あいつは変わったんです」


穏やかに思えた彼の表情は一変した。

彼が険しい顔で睨みつけているのは、今はここにいない黒木貴史だろうか。

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