夢みる蝶は遊飛する

「俺たちは、県選抜の選考会にエントリーしたんです。中学のチームで闘うのには限界があるから、力のある奴らともっと上で勝負したくて。
必死でしたよ。倒れそうになりながら練習して、試合してるところも見られて、それで判断されるんだから、それでもやるしかない」


選手の選抜に、そういったテストが課されることもある。

そして選考の結果、精鋭たちが集められるのだ。


「その時からあいつは変だったんです。いつもならもっと周りを見て判断して行動するのに、自分勝手なプレイばかりして、協調性なんかかけらも無かった。
緊張してるとかそういうものでもなくて、ただ、いつもとは別人みたいだった。俺のライバルで、尊敬してるあいつじゃなかった・・・・っ」


悔しそうに、悲しそうに目をつぶって首を振っている。

たぶん、憎しみよりもずっと大きいのは、その感情だろう。


「だから俺、訊いたんですよ。なんでそんな風になってるんだって。真剣にやらなきゃ、俺たち選ばれないぞって」


そうしたら、と呟いて、彼は口をつぐんだ。

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