夢みる蝶は遊飛する


思い出したくない、言いたくない。

そんな気持ちが伝わってくるようで、痛々しかった。



彼はきっと、この想いをずっと自分の内に留めておいたのだろう。

私が他の部員に聞かされた話は、もっと簡潔で、ともすればただの僻みにさえ聞こえてしまいそうなものだった。


相手は選ばれて、自分は落ちた。

けれどそれだけではなかったのだ、当時起こったのは。




「そうしたら、あいつ、言ったんです」


もう私に、彼の感情を言い表すことはできない。

その瞳はいったいなにを見てきて、なにから目を逸らしてきたのだろう。


「俺はもう決まってるからいいんだ、って」


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