夢みる蝶は遊飛する

「その結果、俺は今もこうしてこんなところでくすぶってて、あいつは最高の環境と最強のチームでプレイしてる。
自分が選ばれなくて悔しい、あいつが選ばれて嫉妬してる、そういうものじゃないんです。あいつが正当な方法で代表選手になったなら、俺だって・・・・」


自嘲の笑みが痛々しい。

思わず目を背けてしまいたくなるほどに。


けれど、私の口から出た言葉は、彼の傷を癒す優しいものではなかった。




「それで?」

「は?」


攻撃的な言葉を吐いた私に、彼は怪訝そうな顔をした。



「その憎しみを、私に転嫁してどうするの?」

「なに言ってるんですか」


私は聞き分けのない子どもに向けるような目で彼を見た。


「私とその黒木貴史は、皇ヶ丘学園っていう共通点しかないのに。それで復讐した気になって、満足してるの?
私の過去を知って可哀想だって言って、貶したくらいで満たされるほど、その気持ちって軽いのね」


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